ワードリストへ


いまさら聞けない勉強室&ワード集



輸入食品〜なにが、どこから、どうやって、

 輸入食品のこととなると、「安全性」「国内自給」「飢餓輸出」「海外の環境破壊」「国内の農・畜・水産業の衰退」などたくさんテーマがあります。ここでは、とても基礎的なお話をします。


【なにが】

日本は世界一の農産物純輸入国です。
 小麦、大豆、とうもろこしなどはもとより、牛肉、豚肉、鶏肉、玉ねぎ、かぼちゃ、キャベツ、オレンジ、レモン、バナナ、サクランボ、エビ、マグロ、カツオ、ハム、チーズ、砂糖、チョコレート、コーヒー、缶詰、冷凍食品、お菓子、焼き鳥、アジフライなど生鮮・冷凍・加工を問わず食べもののほとんどを海外に依存しています。
 野菜は生鮮ばかりではありません。冷凍、カット、加工された野菜がぞくぞくと日本に入っています。ニンジンをレストランでそのまま使えるように様々な形にカットしたもの。ロールキャベツのような総菜、なんとナスを炒めてから冷凍したものまで様々。ファミリーレストランで、「これは国産だよね」と思ったものでも輸入品ということが多くなっています。
 えっ、これも。というものも少なくありません。そば粉、わらび、たけのこ、きのこ、ひじき、わかめ、ウニ、イカ、タコ、梅干し、らっきょう……日本の伝統食といわれる物も海外に頼っています。

【どこから】

 輸入国も様々です。全体的には、アメリカに農産物で4割程度頼っていますが、かぼちゃはニュージーランド・メキシコ・トンガ、タコはモロッコ・カナリア諸島・モーリタニア、あさり・しじみは中国、韓国、北朝鮮、マグロ・カツオは台湾・韓国・インドネシアなど全世界から日本に続々と食べ物が届きます。

【どうやって】

 小麦やとうもろこし、米、バナナなど重量のかさむものは、船積みされて長い日数をかけてやってきます。高い温度、湿度でカビなどが生えないようにポストハーベスト(収穫後)農薬が使われる理由のひとつがここにあります。また、レタスなどは冷蔵コンテナで運ばれます。肉は、冷凍したものが一般的ですが、中には牛がそのまま飛行機で運ばれてきたりします。魚も冷凍が多いのですが、マグロのように生きたままジェット機で運ばれるものも多くなりました。
 それらは、いずれも成田空港や横浜などの港に陸揚げされます。成田空港は、現在日本最大の「漁港」とさえ言われています。

【食品輸入の仕組み】

 食べものが日本に輸入される際には、いくつかの検査を行うことになっています。
 家畜や肉類の場合、「家畜伝染病予防法」によって動物検疫があります。植物の場合、「植物防疫法」によって、植物検疫があります。魚介類や加工品には検疫はありません。
 この検疫に合格すると、「食品衛生法」によって、食品検査が行われ合格なら、通関手続きをして、関税を払って国内に流通します。

【検疫と食品検査のちがい】

 万全の検査体制ならいいのですが、実はいくつか問題があります。
 ひとつは、最初の動物検疫や植物検疫は食べ物の安全性ではなく、家畜伝染病や植物に害を与える昆虫の上陸を防ぐのが主目的です。そこで、植物検疫の場合「くん蒸」の問題があります。
 ここでは、殺虫剤として「青酸ガス」や「臭化メチル」などが直接使われます。担当省庁の農水省などは安全性に問題ないと言いますが、浸透性のある「臭化メチル」の使用などには不安があります。
 また、安全性チェックの鍵となる食品検査ですが、これは急増する輸入量に検査が追いついていないのが実状です。しかも、現物チェックができているのは書類審査のうちわずかの割合です。
 そのため、市販されている輸入品から抗生物質や高い濃度の残留農薬が検出されたりすることも起こっています。

参考:「日本農業新聞」「日本経済新聞」「飽食日本とアジア」(日本消費者連盟編、家の光協会)『1992農林水産物の貿易』日本貿易振興会、『グラフで見る食料・農業・農村』食料・農業研究会(農林統計協会)、『恐るべき輸入食品』(合同出版)、『ガットの落し穴 食品安全基準』田坂興亜他(家の光協会)など


copyright 1998-2000 Keiki Makishita