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いまさら聞けない勉強室&ワード集



カビを嫌わないで

「カビ」いやな響きです。お風呂場のくろずみ、パンなどのカビ。湿度が高くて、温度がある程度あれば、どこにでもあらわれるカビ。また、カビはアレルギー原因のひとつとしても知られています。でも、かつお節やペニシリンのように、カビが役立つ面も少なくありません。カビとうまくつきあうために、きゃつの正体を知りましょう。


●カビとキノコと酵母

カビの正体は何でしょう。細菌でもなければ、植物でもありません。
 カビは、キノコや酵母と同じ真菌類です。真菌類は、細菌とは違って細胞の中に遺伝子を納める核がはっきりある生物です。
 また、植物ではありませんので、光合成ではなく吸収(分解)によって生きています。カビとキノコと酵母、形や見た目(酵母は目には見えませんが…)はまったく異なりますが、系統的には仲間です。
 カビ類は、地球の生態系にとってとても重要な役割をもっています。それは、細菌などでも分解しにくいセルロースなどを早く分解する作用です。セッセセッセとカビたちが働くおかげで、立派な堆肥もできますし、地球はゴミの山にならずにすんでいます。

●人間に役立つカビの仲間

 カビの仲間たちは、人間の生活にとても役に立っています。日本に独特のこうじカビは、味噌、醤油、日本酒、焼酎などを作る上で欠かせない「カビ」です。また、かつお節もカビがあの旨みを作っているのです。
 青かびと言えばペニシリン。医学の面で抗生物質が果たした役割ははかりしれず、それもカビのおかげです。
 カビの仲間のキノコは多くが食用として知られています。シイタケやマッシュルームなど、洋の東西を問わず食べられてきました。
 そして、酵母。人類の食生活にこれほど大きな影響を与えた生物はないのではないでしょうか。
 ワイン、日本酒、ビール、そして、パン、チーズ。
 カビをむげにはできないですね。

●でも、やっぱり

それでもカビは困りもの。お風呂などの水まわりが黒ずんだときにはうんざりしますし、食べものについたカビにはがっかりしてしまいます。
 稲に大きな被害を与えるイモチ病はカビですし、突然温度が上がると腐る軟腐病やベト病もカビが原因です。殺菌剤などを使わずに栽培していて、これらの病気が出たときには、畑が全滅の危機ということも少なくありません。
 それに、人類の大敵と言われる水虫もカビです。
 また、アレルギー原因のひとつになる他、ダニのエサとなってアレルギー原因を増やすこともあります。

●困ったときには

 特に、現代の建築物は密閉性が高いため、湿度が高く、換気が悪くなりがちで、カビが生える条件が揃っています。日本のように湿度の高い国では、要注意。だからと言って、食品に安易に防かび剤・防腐剤を使ったり、何でも抗菌剤入りの製品にしてしまうのは問題です。カビも生物。生物に毒になるものは使い方次第では人間にも毒になるのですから。
 では、実際カビが生えたらどうすればいいのでしょう。食べものの場合、基本的には「食べない」ことです。そして、カビを生えさせないことです。
 水分がなければカビは生えません。また、カビの胞子が付着できなかったらカビの生えようがありません。
 乾物はきちんと乾燥させ、結露しないような場所にしっかり保存。
 かびやすいものは、冷蔵庫や冷凍庫をうまく使って、できるだけ早めに食べる。
 そんなことが、食べものをカビに食べられないための基本です。
 住まいのカビには、アルコールで対処。例えば畳なら、水拭きして、さらにアルコールで拭きます。防かび剤や防かび洗剤などはできる限り使わないようにしましょう。
 そのためにも、日々の予防が一番です。何より家庭内のカビ防止には、換気、乾燥あるのみ。また、エアコンのフィルターなどにはカビの胞子がたまりやすいので、こまめに掃除を。湿気を吸いやすい、押入なども定期的に空気を入れ換えるなどカビが繁殖しない工夫が必要です。

参考文献『カビの不思議』(椿啓介著、筑摩書房)


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