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いまさら聞けない勉強室&ワード集



畑の寄生虫


【寄生虫は虫じゃない】

「虫食い野菜だったから寄生虫が心配」とか、「夏になると虫が増えるから寄生虫が心配」という人がいます。
 ええええええええええ。と思いますが、現実にいるんです。
「寄生虫」に「虫」の字がついているためのようですが、「寄生虫」と「虫=昆虫」は違う生きものです。
 ちなみに、虫食いや野菜についている虫はほとんどが昆虫類です。間違って食べてしまっても消化されてしまい、人間に寄生することはありません。

【寄生虫ってどんなムシ?】

 寄生虫は、人や動物をはじめ他の生物から栄養を摂取して、寄生生活を営んでいる生物の総称です。なかでも、体内に寄生する原虫類、線虫類、吸虫類などの内部寄生虫を一般に「寄生虫」と呼んでいます。
 世界中で人間に寄生することが知られている寄生虫は、200種類以上。日本にも約100種類がいて、主なものに回虫やぎょう虫がいます。
 また、最近では、輸入食品やグルメブームによって、これまで日本ではあまり見られなかった寄生虫も増えています。

【寄生虫と人間】

 しばらく前までは、ぎょう虫検査をはじめ、寄生虫検査や寄生虫予防のための対策が活発でした。下水道設備をはじめ衛生状態が悪かったこと、多くの感染者がいたために結果として感染しやすかったことなどのためです。
 日本では、徹底した寄生虫対策を行い、世界では唯一と言っていいほどきちんとした回虫駆除のコントロールが行えました。ぎょう虫についても、かなりのコントロールができましたが、ぎょう虫は対策が難しいために、現在も子どもを中心にして地域的に家族単位で発生しています。
 また、近年ではあまり寄生虫症が見られなくなったために、寄生虫に対する意識が低くなり、輸入食品・生食・ペット経由などの新手の感染源などによって感染するケースも増えています。

【有機野菜と寄生虫】

「有機野菜が最近の寄生虫の原因」という説があります。「化学肥料と農薬で寄生虫は少なくなっていたのに」というわけです。
 有機農業運動が起こるはるか以前、まだ化学肥料が主流になる前に、野菜を作るのに人糞をそのまままいていた時代がありました。これが寄生虫(特に回虫)の感染ルートになっていたことは確かです。

 しかし、現在の有機農業は単なる昔の農業ではありません。動物の糞、植物残さなどを使ってたい肥を作りますが、2カ月から長いもので3年かけて発酵させます。この発酵過程で60〜85度ほどの熱が出て、しばらくの期間続きます。もし、寄生虫の卵がいても、この熱で死んでしまいます。
 まして、感染源には人間も必要です。有機農業生産者に限って回虫やぎょう虫の感染率が高いということはありません。
 ですから、こうした有機たい肥を使っている限り、有機野菜が寄生虫の原因を増やしているというのは間違いです。
 一般栽培の野菜でも、有機栽培の野菜でも、寄生虫に対する可能性は同じだと思っていいでしょう。もちろん、絶対ないとは言えません。寄生虫の感染ルートを考えると、土壌で栽培される野菜、流通過程、料理過程などが考えられます。

【寄生虫がいやなら生野菜を食べない】

 寄生虫がどうしてもいやだったら、生野菜を食べないことです。流水で野菜を洗ってから使うだけでも効果があります。でも、洗剤などは使わないでくださいね。

参考資料:『寄生虫の世界』(鈴木了司著、NHKブックス 1,000円)、『寄生虫館物語』(亀谷了著、ネスコ/文芸春秋刊)
目黒寄生虫館:JR目黒駅西口から徒歩15分


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