ポリカーボネート製食器と学校給食
●学校給食食器
学校給食に使われる食器は、アルマイト、ステンレス、プラスチック(ポリプロピレン、メラミン、ポリカーボネート)、強化磁器、強化ガラス、木食器などがあります。
30代より上の人たちはアルマイトのカチャカチャした音を記憶されていると思いますが、熱を伝えやすいアルマイト食器は、熱いものを入れると持ち上げにくいため、先割れスプーンと合わせて犬食いの原因とされ、ポリプロピレン製の食器が導入されるようになりました。ところが、ポリプロピレンには、原料の他、添加剤として酸化防止剤のBHTが入っており、その溶出が問題になり、反対運動が起こりました。
そして、より安全性が高いとして、次にプラスチックの一種メラミンを使ったメラミン製食器が導入されました。ところが、このメラミンからは、原料のひとつであるホルムアルデヒドが溶出することが分かっていました。ホルムアルデヒドは、発ガン性が指摘されており、80年代はじめに大きな反対運動が起こりました。
さらに、プラスチック業界は、ほ乳瓶にも使っている安全性が非常に高い食器素材として、ポリカーボネートを持ち出しました。ポリカーボネート製食器は、ここ数年、ものすごい勢いで学校給食の食器として採用され、現在のように、学校給食を実施している公立学校の40%が一部であっても使用していることになっているのです。
●ポリカーボネート
ポリカーボネートは、プラスチックの一種で、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と言われているビスフェノールAを原料としています。食器などをはじめ、多くの製品に使われていますが、食器については、溶出基準が2.5ppmとされています。
しかし、環境ホルモンで問題になるのは、ppbレベルであり、ppbレベルではお湯や油、酢、アルコールなどにより溶出することがこれまでに行なわれている実験でも明らかになっています。
ppmは100万分の1、ppbは、10億分の1でppmの1000分の1です。
●プラスチック食器の問題点
環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の問題で、ポリカーボネートが悪く、メラミンやポリプロピレンに替えようという地域が出ています。
しかし、前に述べたようにメラミンには発ガン性があるホルムアルデヒドの溶出が指摘されています。ポリプロピレンの酸化防止剤は、今はBHTが使われていないようですが、添加剤としてどんな物質が使用されているのか、企業秘密で分かりません。
実は、プラスチックの不安は、「何が入っているのか分からない」ということがあります。
プラスチック製品を作るには、主である原料の他に、様々な添加剤が使われます。可塑剤、難燃剤、酸化防止剤等々…。それら、含まれている化学物質については、企業秘密としてほとんど明らかではありません。また、行政による管理もありません。
どんな化学物質がどれほど入っているのかが分からないのです。
まだ、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)が疑われている物質はすべてが明らかになったわけではありません。プラスチック容器は「何が入っているか分からない」点において、まず不安なのです。
次に、プラスチックはそのなりたちから、磁器や陶器、ガラスなど、伝統的な食器具に比べると非常に低い温度で製造されます。また、油や酸、アルコールなどによって溶けやすい性質があります。そのため、日常的に使用する温度(95℃以下)であっても、ppbレベルなら溶出する可能性が高いのです。その点がもうひとつ、プラスチック食器の不安です。
さらに、プラスチックは組成上、油になじみやすいために、油落ちがしにくいのです。
みなさんも、台所でプラスチック製の密閉容器(タッパーなど)の油落ちの悪さを体験されたことがあると思います。
そのため、油落ちに対しては石けんではなく、合成洗剤が使用されやすくなります。
合成洗剤の使用を促進しがちだという点からも、プラスチック食器はおすすめできません。
●学校給食には強化磁器、陶磁器、強化ガラスを
まず、第一に考えるべきは、子どもたちの未来です。私たちは、子どもたちの未来を奪う権利を持ち合わせません。
もし、今、ポリカーボネートや他のプラスチック食器に不安があるのならば、「疑わしきは使わず」です。
そして、日常的に使う素材であり、高い温度で形成されるため原料素材の溶出が非常に限られ、少なくとも発ガン性や環境ホルモン(内分泌かく乱)作用のないと考えられる食器を使用した方がよいと思います。
すでに、メラミン食器の運動の頃から、強化磁器などの導入は進められ、現実に、替えているところがたくさんあります。
給食センターでたくさんの食器を利用するところでも強化磁器を使用しているところがあります。
コストや調理員さんの労働の問題、設備を一部改善するなどの問題がありますが、子どもたちの未来に比べれば、それは、解決できる問題です。
また、子どもたちが食器を手荒く扱うため、割れて危ないという指摘もありますが、食器は「割れる」ものです。割れる物を、割れないものに置き換えたため、子どもたちは食器を投げたり、手荒く扱うのです。
割れるものならば、それなりに扱うことは、導入した学校が実証しています。
それに、強化磁器や強化ガラスは、家庭用の食器よりも割れにくい工夫がこらされています。
また、「割れる」ことを学ぶことも教育だと思います。
余談●
もちろん、今、ポリカーボネート製食器を使用しているところも、子どもたちに「環境ホルモン(内分泌かく乱物質)」について学ばせる絶好の教材になるでしょう。全国の先生たち、どうですか、実践的教育をしますか。
しかし、子どもたちの身体を張った教育に、子どもたちが黙っているでしょうか。
子どもたちはそれほど愚かではありませんよ。
プラスチック食器をやめ、生活の実感のある陶磁器をめざしてみませんか。
せっかくのチャンスですよ。
ただでさえ、学校給食の予算は少ないんです。
これにお金を使わずに、なんのための税金でしょうか。
将来の年金をはじめ、社会負担は誰がするのでしょうか。今の子どもたちでしょ。だったら、もうすこし大切にしましょうよ。(余談でした)
copyright 1998-2000 Keiki Makishita