ロボット・イン・ザ・ハウス

A ROBOT IN THE HOUSE

デボラ・インストール
2017

「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の続編である。前作はぽんこつロボットとぽんこつ青年の珍道中、大人のためのジュブナイルだった。今回はふたりのロボットの青春?とふたりの人間の中年の危機の物語、なのかな。
 さて、前作でぽんこつ青年・ベンとぽんこつロボット・タングは長い旅を終えて、とりあえずイギリスのベンの家に戻ってきた。ベンの元妻エイミーにはベンと別れた後に妊娠が発覚、女の子のボニーが誕生し、ベン、ベンの元妻(のままの)エイミー、気持ちは少年のタング、生後9カ月のボニーという家族とも同居人ともつかない暮らしが続いていた。ある日、庭に、ロボットがひょっこり現れた。「黒い球体で、頭から針金ハンガーのフックや型の部分に似た金属が勝手な角度に突き出している」名前をジャスミンというロボットである。彼女はタングの製作者であり、マッドサイエンティストのボリンジャーによってタングを取りもどすためタングとベンの居場所を特定し位置情報を発信することだけをミッションとして作られ、送り込まれてきた新たなロボットだったのだ。

 で、そこから、ジャスミンをめぐる騒動がはじまる。
 ジャスミンと人間たちの関係性、ジャスミンとタングの関係性。タングとボニーの関係性。タングとベン、タングとエイミー。さらには、エイミーとよりを戻したくてしかたないけど、これ以上嫌われたくないベンと、子どもを抱え、弁護士事務所から解雇されてしまったエイミーの複雑な気持ち。
 物語はベンの視点から描かれる。中年だめ男性の関係性再構築の物語だ。しかし、関係性は日々変わっていく。赤ん坊のボニーは育つ。ロボットのタングだって、これまでも内面は成長してきたし、成長を続けている。タングと同じく作られたジャスミンはやはりミッションには不必要な自我と意識を持っており、関係性の変化は双方向に起きてくる。
 自我と意識は、他の自我と意識と接すると変化するのだ。それは成長であったり、成熟であったりする。
 ベンも、エイミーも、中年だって成長するし、変化する。
 日常の中の小さな出来事の繰り返しが5つの自我(というにはボニーはまだ早いけれど)を成長させ、変化させていく。
 そういう「半分家族」の物語だ。
 とくにタングとジャスミンの関係性は、アニメ「WALL・E」によく似ている。ぽんこつのロボットと高性能な無口なロボットの出会い。さてさて。老境に差しかかったおじさん、ほのぼのしちゃったよ。