REVENANT GUN
ユーン・ハ・リー
2018

「ナイン・フォックスの覚醒」「レイヴンの奸計」につづく三部作の最終刊である。前作から9年の月日が流れた。1作(と2作)の主人公チェリス=ジェダオは所在不明。そして、ジェダオが不死であり連合の陰の実力者であるクジェンにより復活させられる。このジェダオは若い時代のジェダオであり、かつて自らが犯した大罪のことは記憶にない。一方、姿をくらましたチェリス=ジェダオは1、2作の主人公のジェダオであり、チェリスである。つまり、ジェダオとしての存在は、この三部作目ではふたり存在する。ああ、ややこしいぞ。
前作で起きた「暦法改新」により六連合は大きくふたつの勢力が争っていた。旧暦法を守り復活させようとする後民派と、新暦法による新たな政体を整えようとする協和派である。協和派は強いて言えばチェリス=ジェダオが引き起こした暦法改新の支持者である。
そこにもうひとつの勢力としてのクジェン&若きジェダオの動き、さらには単独行動を続けるチェリス=ジェダオの動きが絡まり合い4つの方向から、六連合世界は大きく動こうとしていた。
今回は、複雑なドンパチはない。そういう意味ではスペースオペラではないし、ミリタリー色もない。
前2作を舞台背景に、複雑な権力をめぐる人間関係ドラマが繰り広げられる。
SFでありファンタジーである。
そして、前作から存在感を増してきた僕扶の存在と活躍。人類社会を陰で支えてきたAIドローンたちの「社会」と「意思」の物語が面に出てくる。僕扶の世界まで入れれば5つの方向からの物語でもある。
ふーくーざーつーです。ジェンダー表現、知的存在をめぐる表現もふくめて、きわめて現代的なSF、ファンタジーと言える。
ことに本作で登場してきた若いジェダオは本作の主人公のひとりなのだが、周りのみんなはジェダオが大罪を追っており、恐るべき存在だと思っているのに、当のジェダオはその記憶も知識ももっていない。記録に目を通しても、それを自分でやったとは信じられない。寄るところを迷う存在として丁寧に書かれている。しかし、なかなか共感はできない。
どうしても1作目から結構さんざんな目にあってきたジェダオではないチェリスの行く末が気になっていたからだ。だから最後まで読んで、チェリスにきちんと収まりどころが用意されていたのが良かった。物語はそうでなくっちゃ。